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【新しい書店のかたち】棚貸し本屋・シェア型本屋が流行中の理由とは?

本屋さんといえば、大型の書店や駅前の書店を思い浮かべる方も多いと思います。

今、新しい書店の形が流行しているのをご存知でしょうか。

棚貸し本屋」、「シェア型本屋」と言われる形式、複数の個人書店が集合して運営する形式です。今日はこの新しい書店の形をご紹介します。

シェア型の書店とは

棚貸し本屋、シェア型本屋と呼ばれる書店は、およそ30cm四方のボックスを個人に貸し出すことで運営しています。その棚ひとつひとつを月額で個人に貸し出し、店舗はその収益を運営費にあてます。

棚は個人やコミュニティグループ、実際の書店オーナーなどに貸し出します。利用者は、「棚主」などと呼ばれることもあります。

その棚は、「小さな個人書店」として運営され、「〇〇書店」「〇〇書房」などお店っぽいものから、個性的なものまで「屋号」をつけて運営されます。一店舗の利用者は、規模によって数名から数十名規模までさまざま。

通常の出版取次からの仕入れだけではなく、古本や個人制作のZineなどを販売される方も。棚主ご自身が出版された書籍などを並べる方もいらっしゃいます。

シェア型は普通の書店と何が違う?

シェア型の書店は、駅や商業施設に店舗を構える大型チェーン書店などとは何が違うのでしょうか。

ビジネスモデル

シェア型の書店と一般的な書店では、ビジネスモデルが大きく違います。本を売る、と言う部分もちろん売り上げの一部ですが、店舗の運営費はその売り上げに依存しているわけではありません。

一般的な書店は、主に出版社からの仕入れを業界特有の委託販売契約に頼っています。出版業界における委託販売の文化として、出版社と書店を出版取次会社が仲介するという慣習があります。

小口であれば、出版社から直接仕入れることもありますが、大型の書店はほぼこの出版取次が間に入っています。出版取次の二大大手として「トーハン株式会社(株)」「日本出版販売(株)」が挙げられます。

例えば、書店で書籍の予約などをする場合、この出版取次会社の名前が入った予約票を使いますが、それは書籍の仕入れが取次を経由して行われることを意味しています。この大手からの仕入れに依存しない個人書店として、シェア型の書店は運営されています。

シェア型書店は、個人が仕入れた書籍の売上を一部収益として得る他、月額のサブスクリプションで収益をあげており、店舗の「販売面積」を提供することで収益を上げるモデルです。

この仕組みは非常に人気の理由で、店舗のオーナーは本の売り上げに関わらず、店舗を運営を安定させることができます。その理由は、従来の委託販売モデルの課題を掘り下げると見えてきます。

新刊書店の委託販売は課題が多い

昨今、スマートフォンによる電子書籍の流行や、新型コロナウイルスの影響も相まって、紙書籍を販売する書店の総数が減っています。20年前は20000店舗以上あった書店は半数以下に減っています。

その理由はそれだけではなく、書店の収益化の仕組みが店舗に相当負担をかけるものであるという側面がありました。書籍の売上から分配される収益の比率は出版社が60%書店が20%と言われますが、1000円の本が売れると200円しか書店に入りません。(ちなみに残りは、出版取次が10%、著者印税が10%)

いわゆる大型の「新刊書店」という形態の書店はこの縛りによって、在庫を抱えれば抱えるほど出版取次に買取金額を支払わなければならず、キャッシュフローの面ではかなり不利な状況でした。

さらに、委託販売の場合には、「返本期限」というものが設定され、期日までに販売し切らないと返本時の返金額が減額されてしまい、赤字になります。そのため、書店は返本期限までになんとか売り捌くための努力と、それでも売れ残ったものは出版社へ返本するための対応に追われます。

そうこうしているうちに、次の新刊が取次から送られてきて、一時的に買い取りしなければならず、それらも返本期限までになんとか売り捌かなかればなりません。

このように、自転車操業的に新刊を買っては、返し、買っては、返しの繰り返しを行っているのが新刊書店の実情です。

シェア型書店のメリット

シェア型書店は、このような返本にまつわるデメリットをクリアしています。

まず基本的な収益は「本の売上」ではなく、「棚主の利用料」です。つまり、本が売れなくても、月々の収益はサブスクリプション契約によって、棚の利用者から支払われますので、最低限、固定費を賄うだけの収益を上げることができます。

その上で、棚主同士の人脈で集客を見込むことができます。一人の店主の集客力が10人だとすると、50人の店主がいれば、500人集客できます。

単に、店舗を構えてお客さんを待つよりも棚主さん一人一人が店主としてSNSなどで独自の人脈で集客活動を行いますので、自然とマーケティングの母数が増えることになり、さらに、店舗自体の宣伝効果も得られるという仕組みです。

シェア型書店のご紹介

ここからは、実際に運営されているシェア型書店をご紹介します。

ブックマンション 【吉祥寺】

シェア型書店の先駆けとなったのが、吉祥寺にあるブックマンションです。70人の棚主さんが常時借りていて、人気のシェア型書店です。

特にWebサイト等で集客をしているわけではなく、Twitterなどを通じて、お店を知り足を運んでくれる方が多いそうです。

私も一度足を運んだところ、お店番をされている棚主さんと話が弾み、ずいぶん長居してしまいました。棚それぞれに棚主さんの思いが感じられる温かい空間です。

ぼっとう&よはくBB【江古田】

西武池袋線の江古田駅にある「ぼっとう&よはくBB」は、コワーキングスペース兼、ー棚本屋さんとして営業しています。

靴を脱いで上がるスタイルの、アットホームな空間は、くつろぎながらたくさんの本をじっくり選ぶことができます。古本を多く取り扱っており、それぞれの棚主さんごとにジャンルの違うラインナップになっています。

こちらの「ぼっとう&よはくBB」は私も一棚お借りしていて、「世界書店」という棚を置かせていただいております。ビジネス書を中心におすすめ本を販売しておりますので、ぜひ江古田駅近辺にお住まいの方は足を運んでみていただけると嬉しいです。

ブックスタジオ 【池上】

池上駅の池上本門寺の近くにある、ブックスタジオは、オーナーのお二方がそれぞれデザイナーとランドスケープ設計事務所を営んでおり、1階をシェア型書店として2020年にオープンされました。

テーブルスペースが広くとられており、ワークショップを開催したり、棚主の方が自由にレイアウトしたりと、日によって表情の違う店内となっています。地域のコミュニケーションの場としての書店をデザインされており、道ゆく人がふらりと入りやすい、素敵な空間でした。

シェア型書店は2021年にオープン続出

他にもシェア型書店は次々にオープンしており、調べたところ、10店舗以上のお店が2021年にオープンする予定です。出版不況、書店の減少と、本屋さんの課題は多い中で、盛り上がっているシェアが書店のムーブメントは、書店の新しい時代の到来なのかもしれません。

シェア型書店に足を運んだ際には、またお店のレポート記事を投稿したいと思いますので、お楽しみに!

ではまた!