書評

忘れる読書 | 落合陽一(著)

おすすめ本 「忘れる読書」 | 落合陽一(著)

メディアアーティストにして研究者である落合陽一さんの読書にまつわる考え方を凝縮した一冊です。

TVやNewsPicksなどでの露出も多く、会社も経営されている側で大学で教鞭をとるようなマルチな才能を持つ方ですが、幼少期からの読書がその一端を形成してくれたと語ります。

大学時代には岩波文庫を100冊読破するなど、現在でも自宅の床には本が複数のタワーを築いているほど、かなりの読書量であるそうです。本書は落合陽一さんの読書スタイルを紹介し、影響を受けた書籍を通して「読み方」を説かれています。

お勧めされている書籍もどれもとても魅力的で、私も何冊か本書をきっかけに購入しました。

忘れる読書とは

タイトルにもあるように「忘れる読書」とは、読書術を本質的に表した言葉です。

多くの場合、本を一冊読んでも覚えていることというのは高が知れていると思います。自身の専門分野ならまだしも、教養を身につけたいとして手に取った仕事や生活とかけ離れた書籍に関しては、せいぜい要点にして1、2行しか記憶に残っていないのではないでしょうか。

結果的に忘れてしまうのですが、何もかも一冊まるまるを自分の知識として地肉にしようとは考えない方がよく、その本のざっくりとした知識を残し、自分の中にインデックス化しておけば良い、というぐらいがちょうど良いと言います。

私も折角読んだ本を隅々まで記憶して自分の糧としたいと構えて読んでいました。本書は、読書を今の自分にない思考に「気づく」ということを目的にしてよく、今までなかった「気づける」という力が得られれば良いのだと捉えています。

教養とは、この「気づく」ことができる力、すなわち「課題を見つける力」を養うことであり、本書では読書を通して、いかにこの教養を身につけるかを多角的に解説されています。

書籍は、ネット記事やTVと違って体系的に知識が集約されたパッケージとして教養を身につけるには大変効率の良いツールです。

なかなか本を読まなくなってしまったという方や、本を読んでも知識が身につかないと考えている方は、ぜひ一度、本書をもとに「読書」との向き合い方を振り返ってみてはいかがでしょうか。