心理学

【心理学】いつも怒っている人は敵意帰属バイアスかもしれません

いつも感情的に否定してくる人や、何を言っても話が通じない人が周りにいませんか?

そんな人は敵意帰属バイアスによって認知が歪められている可能性があります。家族や友人、職場の同僚や上司にそのような傾向があったなら、コミュニケーションも取りづらくなります。

敵意帰属バイアスとは何か、そして、私の対応経験をもとに対処法を解説します。

敵意帰属バイアスとは

敵意帰属バイアスとは、他人の言動が自分に敵意のある言動だと積極的に認知してしまうことです。

心理学で言う認知バイアスの一種です。認知バイアスについては、当ブログでも紹介させていただきましたので、ご参考とされてください。

敵意帰属バイアスに陥った人には、何度説明しても伝わらないことが多いです。例え相手を思って親切心で伝えていることでさえ、曲解されてしまい、会話が平行線で進まない、といったことがよく起こります。

敵意帰属バイアスの事例

私の実体験に基づく敵意帰属バイアスの例を紹介します。

職場において、「担当されている作業が終わっていないため、実施をお願いします」とメンバーに指示をしたことがあります。

すると、「あなたが管理していないことが悪い」と感情的に返答されるのです。

驚いた私は、管理上のミスが無かったことや、充分な工夫がされていることを挙げて説明しましたが、「そんな事だから作業が漏れるんだ!」「もっと管理しろ」と、一方的に攻め立てられるのです。

作業の依頼と、管理の関係性は当然あることです。
もっと良い具体的アイデアがあれば、アドバイス貰っていいですか?」と伝えても、「そういうことじゃ無い」と否定され、全く会話にならないのです。

このようなやりとりが、そのメンバーとは何度もありました。

敵意帰属バイアスの正体

敵意帰属バイアスは、自分に自信のないことの表れであり、自信のない自分を正当化するための手段です。

自信がないがゆえに、コミュニケーションに恐怖を感じてしまっていることが原因と言えます。

コミュニケーションに恐怖を感じる理由

コミュニケーションで恐怖を抱く理由は、複数あります。

本能的に自分の無知さ、努力不足、過ちが知られてしまうことで羞恥心を抱くことが嫌だという思い。

格下に見られることで、集団の中で「その他大勢」と思われてしまい、立場的な優位性が得られなくなることが嫌だという思い。

このような、それまでの自分を否定されることに恐怖を抱いており、人一倍、自尊心が傷つくことに恐れている人物が陥ってしまう認知バイアスです。

自尊心を守るための行動原理

敵意帰属バイアスに陥った人物は、この恐怖を克服するのではなく、他人を遠ざけることで恐怖を感じる機会そのものを減らそうとします

他人に反発する言動を繰り返し、「あの人の弱みを暴くことはやめよう」と思わせるのです。相手に敵意を持って接することで、相手を意気消沈させ屈服させようとします。

その結果、自尊心を傷つける人物をその場から消し去ることを目的としています。攻撃することで、暴力で相手を支配し、自分の自尊心を守ろうとします

短絡的で幼稚な発想ですが、自分に自信がない人物の多くは、自分自身を律することが出来ない傾向にあることが多く、自然な発想とも言えます。

敵意のエスカレート

論破しようとすればするほど、敵意はエスカレートします。自分の自尊心を守らなければ、という思いをより一層強く抱くため、より攻撃的な態度を取るようになります。

次第に、周囲の人々からの単なる質問ですら、敵意とみなしてしまいます。

「この質問には裏があるはず、きっと私を攻めようとしているに違いない」と考えます。すべてか心の安全を脅かす言葉に聞こえてしまうのです。

すると、単なる質問であるにもかかわらず、回答をすることを拒み、屈折した応答するようになります。

「自分の回答が間違っていたらどうしよう」「自分の考えが浅かったら恥をかくに違いない」などと、ネガティブな思想に囚われているためです。

周囲の人間の対処方法

敵意帰属バイアスに認知を歪められてしまった人は、コミュニケーションの難易度が相当高い状況です。

お願いしたいことがあったとしても、説明は何度も必要で、その依頼を説明通りに受け取って貰えるとは限りません。

何度もしつこく説明すると、その度、敵意をもって反応されるため、あなた自身の心も疲弊していきます。誹謗中傷や、攻撃的な言葉を聞くことは、想像以上に精神に負担がかかるものです。

物理的な距離で対処する

現実的な対処方法としては、双方ともに、物理的な距離を置くことが必要です。毎日毎日顔を合わせていると、敵意帰属バイアスによる攻撃対象となりやすい状況が生まれます。

この人は毎日近くにいる、という事実から、甘えが発生します。その甘えが、認知の歪みをより深めてしまうのです。あの人は傷つけても同じ空間にいるから、攻撃的な態度を取っても大丈夫だ、という甘えた考え方に陥るのです。

職場であれば異動願いを出す、友人関係であれば一度別の友人たちとの付き合うなど、対象の人とは一度距離を置きましょう。

再び会った時には、久々にあった他人として認識されます。久しぶりにあった他人には、多くの場合、失礼のないよう振る舞います。節度をもった対応をしなければならないという別のバイアスにより、徐々に敵意帰属バイアスが矯正されて行くと考えられます。

とは言え、家族やパートナーが敵意帰属バイアスに歪められてしまっていたら、簡単に離れる事はできません。近くにいながらにして認知の歪みを特には、どうすべきでしょうか。

そして、もし自分自身が敵意帰属バイアスに陥っていたら。あなたはどうすべきでしょうか。

認知の歪みを解く方法

敵意帰属バイアスは認知の歪みです。認知の歪みを解くことは、価値観を矯正することです。これは、非常に根気のいる地道な取り組みが必要になります。

家族やパートナーの場合

家族やパートナーが敵意帰属バイアスに陥ってしまったなら、あなたはまず彼らに意見を言うことを避け、話を聞くことに集中します

相手の話を聞き、そして承認することです。承認とは、褒めることではありません。理解することです。

相手の考え方について、理解するためには、こちらは対等な関係として接しているということを態度で示します。

こちらの言動は、相手の心理の中で敵意に帰属されてしまいますが、それでも対等に接します。決して下手に出ず、相手を下に見てもいけません

相手に真摯に寄り添い、一人の大人として、敬意をもって接することです。これは相手が子供であっても同じです。子供だからといって、下手に見てしまっては、尊敬の念が伝わることはないでしょう。

もし、相手が関心を示していることがあれば、その関心事に寄り添うことが大事です。スポーツに夢中であれば、そのスポーツの練習に付き合ったり、芸術であれば一緒に干渉したり作品を作成したり、と相手の関心事に一緒に取り組みます。

相手に共感を寄せていくことで、相手を尊敬していることを言葉ではなく、態度で伝えます。そして、対等の関係として徐々に相手に尊敬されることで、心の安全を脅かす存在ではないと認識されることが重要です。

自分自身の場合

そして、自分自身が敵意帰属バイアスに陥っていると気づいた場合。

あなたには自信を取り戻すための行動が必要です。冒頭でお伝えしたように、敵意帰属バイアスは自信のなさの表れです。

敵意帰属バイアスに陥っていると自身で認識するあなたには、おそらく何らかの劣等コンプレックスがあることでしょう。劣等コンプレックスとは、だれもがもつ劣等感とは異なり、劣等性に対して必要以上にコンプレックスを抱くことです。

例えば、根暗だからコミュ障だから、と言って自分を卑下していませんか。

私の考えでは、どんな人でも、どんな劣等性があったとしても、努力次第で正常なコミュニケーションを交わすことが出来ます。

重病で身体を思うように動かせない人、先天的な障害で言葉を話せない人でも、同じ心を持っておりコミュニケーションをとることはできます。国籍、人種、LGBT。考え方や価値観は、人の数だけあります。その数およそ世界の人口の数、75億通りあると言っても言い過ぎではありません。

自分自身を必要以上に卑下することはありません。まずは自分が自分の味方になることです。

他人を幸せにするには、自分を幸せで満たさなければなりません。自分の幸せのコップを水で満たし、溢れた水でしか相手に幸せを与えられません。

もし、内なる自分を否定していたのなら、まずはその自分を承認しましょう。自身の劣等性を、事実のままに受け入れることです。ポジティブな思考はそこから始めることができます。

幸せになる勇気を持つきっかけは人それぞれですが、ひとつおすすめの書籍を紹介して結びとします。