変な絵 | 雨穴(著)
YouTuberとしても活躍されているホラー系のWebライター「雨穴」さんの著書2作目です。
前回「変な家」は間取りにまつわる事件でしたが、今回は絵画にまつわるミステリーです。
心理カウンセリングなどで用いるイメージ投影や、こどもが描く絵が示す意味、イラストレーターの技法などさまざまな「絵」に関する内容から織りなす四章構成の物語です。
注意いただきたいのは、読みやすい文体も相まって、恐らく多くの人が先が気になり一気読みしてしまうので、時間があるときにぜひ手に取ってほしい一冊です。
私は読み始めたところ、気づけば2〜3時間ほどかけて一気に読み終えていました。
前作「変な家」も同じ時間感覚で一気読みでしたが、明らかに本作は流れるように読みやすくなっており、著者の力量が上がっていると感じました。
次作も楽しみです。
巻末には雨穴さん本人(?)による第一章の朗読特典動画も特典として見ることができるようになっていますので、そちらでも楽しむことができます。
実はこの作品に登場するブログですが、実際に公開されています。
しかも記事数が146あり、本当に実在したかのように投稿が作られています。
さすがのWebライター。Webサイトを使ったこういう演出が読者にフィクションではないのかもしれないと思わせる意図があるのだと思います。面白いですね。
叙述トリックも使われていて、書籍ならではの面白さがあります。
読み終えての感想は、愛、そして自己愛という動機が人を狂わせるということに、根源的な恐怖を感じました。このようなフィクションだけでなく、現実にも起きている異常な事件は、この要因が深く関係しているケースが多くあります。
誰しもが自分を含めた誰かを愛する気持ちを持っているものです。そして、自分の中にある愛情が何らかの要因で歪んでしまったら、何かを壊すことになりかねないというリアリティのある恐怖も感じさせてくれます。
秋の夜長にぜひ、と言いたいところですが、寝不足にならないようご注意ください。
物語冒頭は、動画でも公開されました。
ぜひその不気味な雰囲気を味わってみていただければと思います。