書評

采配 | 落合博満 (著) – 書籍レビュー

采配 | 落合博満 (著)

引用:出版社コメント

マスコミにはほとんど口を開かなかった、あの“落合”が10年ぶり全てを語る!

選手として史上初の三冠王を3度達成(いまだ記録は塗り替えられていない)、監督としてチームを53年ぶりに日本一に導き、2004年の就任以来8年間で2回に1回はチームが優勝、2011年は史上初の2年連続リーグ優勝を果たすなど、選手として、そして監督として脅威の数字を残し続ける男、落合博満。

常にトップを走り・育て続ける名将が、監督就任後初めて明かす、自立型人間の育て方、常勝組織の作り方、勝つということ、プロの仕事ついてetc.…。
ビジネス書、人材育成、自己啓発書としても読める一冊。

レビュー

「俺流」という言葉を流行語にした落合監督の一冊。
ドラゴンズを優勝に導いたその信念と理念が凝縮されている。

リーダーを務める人や目指す人におすすめしたいが、それ以上に、自己肯定感の低い人に一読していただきたい。

監督という意思決定が重要なポジションを務めるための重要な要素が詰め込まれており、その根拠を学ぶことができる。
自己肯定が出来ない、自信がないといった人は、日々生活の上で行動の根拠が少ないことが多い。

人生は、日々目まぐるしく変化する複雑な状況での判断の連続だ。
たくさんの失敗を重ね、人間関係の問題が多々起きるうちに、いつしか自分を肯定することに嫌気がさすこともあるだろう。

しかし、一定の根拠に基づいて行動することで、何か意思決定をする負担が軽くなる。
決して軽くない意思決定をする場合にも、判断したその理由が明確で納得できるものでなければ、後悔の念に苛まれてしまう。

落合博満は、偏向的であるとも言えるほど、意思が硬い。
本書の中で語られているのは、2007年の日本ハムとの日本シリーズ第5戦だ。8回までノーランナーに抑えた山井大介投手を、完全試合目前の9回で岩瀬仁紀投手に交代するという采配だ。

この時、監督として落合博満が判断した理由は、53年ぶりの日本一を実現するための采配であり、一人の投手の栄誉を創出することではなかった。チームと選手を両方取るためには、「もう投げれない」と言っている山井選手を登板させるわけにはいかなかった。

2022年4月にもロッテ佐々木朗希投手が2試合連続完全試合という偉業を達成する目前の9回で交代となったが、似た状況だ。
根拠に従い、目標を達成するためには、完全試合目前で投手を交代することも厭わない。

それは自身の中の根拠に基づいて行動しているからであり、時間が経っても後悔はないという。

目的を明確に持ち、目標と手段を理論的に見極め選択すること。

落合博満氏の理論がどれだけ明確であるかを、書籍として言語化されていること自体が証明である。これでもかと見せつけられる本書は、リーダーシップを取る立場の読者はもちろん、これから自己を形成してく若者にも参考としてほしい内容だ。