心理学

脳とココロのしくみ入門 | 加藤俊徳(著) – 書籍レビュー

脳とココロのしくみ入門 | 加藤俊徳(著)

脳の仕組みを優しく解説してくれる本書は、どこかうまくいかない生活にストレスを抱えている人におすすめしたい一冊です。

脳はその機能の全てを解明されている訳ではないとはいえ、人間の心と行動のかなりの部分を根拠づけることができています。

本書は第一部で脳の機能を短いページで的確に解説され、第二部では具体例を用いて私たちが日常的に抱く「なぜ?」について、脳で何が行われてココロに影響しているのかを解説されています。

「なぜ不倫してしまう?」や「スマホが手放せないのはなぜ?」など、気になる疑問を「つまみ読み」するのも楽しいです。

誰しも苦手なことがあると思いますが、これは脳の特定分野のトレーニング不足が一因とされています。苦手な行動に対して効果的に脳トレするための内容などにも触れられていますので、目次を見ていただいて当てはまる内容があればぜひ手に取ってみてください。

脳の分野とココロの話

本書を引用し、少し脳の話を紹介したいと思います。

第一部で、脳は8つの分野でできており、その各分野は以下の名称と機能を持つと語られます。その分野とは以下の8つです。

脳の8つの分野(第一部引用)

  1. 思考系脳番地 : 自発的な考えや行動を促す
  2. 感情系脳番地 : 喜怒哀楽などの感情表現に関わる
  3. 伝達系脳番地 : コミュニケーション(意思疎通)をする
  4. 理解系脳番地 : 情報を理解し、応用する
  5. 運動系脳番地 : 体を動かすことを全般に関わる
  6. 聴覚系脳番地 : 耳で聞いたことを脳に集める
  7. 視覚系脳番地 : 目で見たことを脳に集める
  8. 記憶系脳番地 : 情報を蓄積し、利用する

これらの8つの分野は密接に関連しています。

例えば③伝達系の機能として「コミュニケーションをする」という行為は、④理解系の機能で相手の話を理解し、①思考系の機能で自分の考えと照らし合わせ、②感情系の機能で喜びや悲しみなどを含めて返事をする、というように一つの行動に複数の機能が関わります。

仕事においては、インプットした情報をもとに④理解系の機能と、⑧記憶系の機能で次のタスクを判断し、⑤運動系の機能でタスクを実行します。マルチタスクが苦手という方はこの⑤運動系のトレーニング不足であることが多いと本書で解説されていて、少し意外な感じがしました。

この中で特にトレーニングが必要だなと思うのは「④感情系」です。自己肯定感の高さや、自己認識能力に関してはこの④感情系を子供の頃から発達されることがポイントとされています。

大人になってからもこの「④感情系」の動きに振り回され、冷静な行動が取れない人を多く見受けられます。例えば高速道路の煽り運転や、よく怒る上司、マウントをとる同僚など、自分の中に生まれた感情を客観的に捉えられず、短絡的に判断してしまっている結果だと考えられます。

脳の仕組みを少しでも理解することは、「今、自分の中でこういった分野の脳が動いているぞ」と冷静に自分を捉える助けになります。

人間の言動は、脳の反応が全てです。優しく解説された本書で、少し脳の世界に触れてみると、明日からの1日が少し鮮明に見えてくるかもしれません。