書評

流浪の月 | 凪良ゆう(著) – 書籍レビュー

流浪の月 | 凪良ゆう(著)

【内容紹介】
映画化決定!!
監督:李相日
主演:広瀬すず 松坂桃李
横浜流星 多部未華子ほか出演
2022年公開予定

2020年本屋大賞受賞作
愛ではない。けれどそばにいたい。
新しい人間関係への旅立ちを描いた、
息をのむ傑作小説。

あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。

– 出版社コメント

レビュー

苦悩と愛の物語に、ページを捲る手が止まらなかった。
爽やかな読後感で、情景に無駄な描写のない文体が物語にストレスなく没入させられる。

タイトルに想いを馳せると、
多くの人が住む地球から離れ、孤独に彷徨う月の孤独さが
“理解されないがそこに居る”という、多数派との圧倒的な距離感を指しているようだ。

主人公たちの苦悩の半生を体験した読者は、
多様性やLGBTという言葉を安易に使うことに抵抗を覚えるだろう。

性的マイノリティがテーマの一つであるが、
社会的にはLGBT(Q+)として年々理解が深まっており、
私も関心を寄せる内容だった。

性的指向と性自認に大別され議論されるが、
本書はこの両方をテーマに、苦難を抱える男性と女性の愛を描く。

小児性愛者としてのレッテルを貼られてしまった男性は、
他者に理解されることのない苦しみを抱き、自己嫌悪と罪悪感のなか生活する。

親類による性的虐待によって男性に拒絶感を抱く女性は、
幼い頃の喪失感を抱き続けながら、本当の自分を抑圧し、「普通」を装って生活する。

そんな二人は互いの普通すぎる一面と、常識から外れた言動にそれぞれ惹かれ合うが、
社会はその関係性を許さない。

この状況は、特異な関係性を物語として描かれているが、
我々の生活の中にも多く潜んでいる。
私も過去にトランスジェンダーの同級生や同僚と社会生活を送ったし、
「異性のどこに惹かれる?」という話題はいつも尽きない。

SDGsの目標として「ジェンダー平等」が掲げられているが、
これは男女に限定した話ではなく、
性的マイノリティにとって生きにくい社会を解決することが含まれている。
個々が抱えるフェチズムを含めるとLGBTQ+という言葉では表せない。

この物語の主人公たちのように、性の奥にある相手の心を見つけ、
その人を形成している全てを認めることが、人としての誠実なのではないだろうか。

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